Archive for December 2006

31 December

SOFTENING



革はなにもせずに乾かすとパリパリに硬くなってしまう。そこであらかた乾いた局面から、乾くまで揉んだりし続けて柔らかくする。本日はその作業である。
剥製屋のマニュアルなんかを読んでいると大体95%乾いた所あたりで始めると良いとある。が、その「乾く寸前」の状態というのもよく分からず、またどれ位の速度でそこに到達するかも分からない。通常1〜2日で乾くとの事だが、革自体がオイリーなのと、冬ということもあって完全に乾くには2〜3日と見込みをつけ、週間予報が晴れの今日に狙いを定めてオイル水を塗り込んで水分を浸透させ、濡れタオルをかけたり、ブルーシートで覆ったり、風にあてたりして調整していた。
この作業はソフトニングというのだが、コツはともかく完全に乾くまで続ける事なのだそうだ。それはそうだろう。普段僕も細工の上で必ず革を一度濡らしてから使うのでよく分かる。スモークしていない革は、最後の最後まで揉み続けても、元通りの柔らかさにはならない。
ちなみにスモークした革は、例え濡らしても、乾いた後でも揉めば元に戻る。つまり革を水で台無しにしないためにスモークするのだ。

ソフトニングには色々なやり方があるが、今回僕がやったのは、 STAKING という方法。そして通常は丸太を使ったりワイヤーロープを使ったりするのだが、筋トレのバーベルラックを分解してそれに肉面を擦り付けて柔らかくする方法、そして手揉み。

STAKING はラックに張り付けた状態で行う。革の厚さに応じて乾く速度も異なるので、乾きかけたところから行う。STAKEと呼ばれる木の棒の様なツールを自作し、それで最初は革をギューっと突いていき、徐々に伸ばしていく。そして革繊維が伸びて来たら、押しながらこすっていく。体重をかけて思いっきり押さないと、なかなか想う様には伸びてくれない。



通常は樫等で出来た、斧等の柄の先端を削って軽くナイフの様に尖らせて STAKE にしたり、野球のバットを使ったりするのだが、ホームセンターで売っていた、地面にこびりついたガム等を剥がす為のスクレイパーがちょうど良かったので、それを買ってブレードの両端を削って丸くして STAKE にした。最初はブレード側でなく、尻の部分で突いていき、馴染んだところでブレードに切り替えた。これで2時間程徹底的に伸ばした。
STAKE は伸ばす場所がピンポイントに近いので、穴があると広げてしまう危険性が高い。僕も薄くなっていたところを3カ所裂いてしまった。補修しても薄すぎて、革がどんどん悲鳴を上げていく。
そこでまだ乾いていなかったが、バーベルラックを使った SOFTENING に切り替えた。
通常この作業は、ワイヤーロープ等を使い、バックスキン等を伸ばすのに使うのだが、Wes Housler がSTAKING とこの方法を併用していたので、僕も応用してみた。また、Jim Riggsもスモーキングの後でこの方法を軽く使うそうだ。



この方法は何せかなりキツイ。思いっきりゴシゴシとしごいていくのだが、30分と連続出来ずに、広背筋が悲鳴を上げる。で、だましだましにやったのだが、完全に乾く前にギブアップ。1時間半程しか持たなかった。
思った以上に乾いていなかった様なので、バーベルラックと物干竿を工房に持って入り、そこに革をかけ、バーベルラックに置いた物干し竿を回転させながら手で揉んでいくという方法を自分で編み出し、ヒーターで強制乾燥させながら、現在も作業は継続中である。

さて、本日は12月31日。熊の革を揉みながら年を越しそうだ。




19:22:51 | hilo | 2 comments |

30 December

穴の補修



STAKING(革を柔軟にする作業)を開始する前に、これ以上拡がったら困る穴の補修をした。トリミング予定範囲から革を切り出して、毛の方向を考えて違和感ない様に穴の形、少し小さめに切る。そして縫っていく。通常ブレインタンの場合、糸は本物のシンニュウ(腱)を使用するのだが、今回は細かく縫いたかったので、普段使用しているナイモDを使用。針は11号ショート。初めて熊の革に針を通してみたのだが、結構硬い。ところどころペンチを使った。
昨日塗ったオイル水の乾燥具合は約50%といったところ。濡れタオルはやめ、フレームを立て、一番乾きの遅い頭を上にして、ビニールシートをかぶせて今日の作業は終了。
STAKING は乾くまでやらなければならない行程なので、乾燥具合によっては一日中やらなくてはならない。数日前から週間予報で狙いを定めて、予定通り明日は午後晴れとの事なので、午前中に乾燥具合を90%までもっていって、作業にかかれたらと思う。

足等のパーツは、今日、セーフティーアシッドへの漬け込みを開始した。今日より3日間。




23:19:31 | hilo | No comments |

29 December

再び加湿



残存メンブレインの除去作業の続き。毛穴を切らない程度にやって、どうしても取れないところは軽石で砕いて、次ぎの伸ばす作業の際に邪魔にならないようにした。
こんなもんだろう、というところまでいって、離れて見てみたら、傷だらけだけど「革」という感じになっていて感慨深かった。



引き続きタープの中に寝かせて、肉面にオイルを溶かしたお湯を刷毛で塗り込んでいく。全体にまんべんなく水分を浸透させた後、濡れタオルで肉面を覆う。その上にブルーシートをかぶせて本日の作業は終了。

こうやって保湿して、水分を繊維全体に行き渡らせてから、棒で突いたりこすったりして革を柔軟にしていく。この作業を SOFTENING 、さらに棒を使うこの作業を STAKING という。

明日はいったんフレームから外して、穴の補修をして、もう一度フレームに張る。そして明後日 STAKING に取りかかる。それが終わるとサンドペーパーで肉面を整えて毛にブラシをかける。これで一応完成なのだが、雨に濡れても柔軟性を失わせない様に、肉面を燻製にする。これは来年の作業になる。


塩漬けにしておいた、両足と片耳を取り出して、スクレイプして強塩水に漬けた。二度目なので慣れたものだ。スクレイプも、これで駄目ならこれで・・・と、臨機応変に動けた。こちらは明日、セーフティーアシッドへの漬け込みを開始する。




21:21:46 | hilo | No comments |

28 December

残存メンブレンの除去



年内に終わらせたかった仕事も片付き、革も耳を残して完全に乾いたので、本日は陽のある間は、余分なメンブレンの除去作業をしようと思っていたのだが、生憎朝から雨。やむのを待って、昼前からスクレイプを開始した。
このステージでは、今までのステージではどうしても取れなかったメンブレンの除去をしながら、硬化した革繊維をほどく準備をする。

今までのステージでは、これ以上メンブレンを落とす為にスクレイパーをかけると、毛根を切ってしまう恐れがあったのでスクレイプできなかったのだが、硬化した後なら、表面だけヤスリをかけたり、鰹節を削る様に少しづつメンブレンを削れそうなので、本来は生乾きの状態で革を伸ばしながらする作業なのだが、独断でまず完全に乾かしてからスクレイプし、その後でもう一度肉面のみ湿らし、浸透させて伸ばす事にした。ちなみに鞣し歴30年のアメリカの友人に事後確認だが問い合わせてみたら、本来はスクレイプ途中のメンブレン除去のステップで完全に乾かしてやる作業だけど、ケミカルを使ったHAIR ON の作業では、そういうやり方もあるそうで、賢明な判断との事だ。

さて、メンブレンは先に述べた通り、皮と脂肪や肉との結合組織で膜の様なもので、すべすべしていて、特に乾いてからはツルツルして光っている。これは皮の様な伸縮性が無く、残しておくと皮の柔軟性を損なう。が、これを残しておいて上手く使う方法をラコタの昔のものを見ていると散見する。ので一概に完全に取り除く必要があるとはいえないが、柔軟性を重んじるのであれば、取り除いた方が良い。
アメリカからの革をよく仕入れている人なら見た事があるかもしれない。バックスキンの裏面に所々、油焼けしたシールの様に、こびりついているあれがメンブレンだ。

使う道具は、スクレイパー、軽石、はさみ。スクレイパーは前に使った物と同じで、自作の柄(フォトスタンド)を取り付けたもの。すぐに刃がボロボロになるので、砥石は常に携帯しておく。軽石はアメリカから取り寄せた専用のものを使用。



左後ろから、軽石、スクレイパー、コロ、左前から、砥石、ハサミ。



自作スクレイパーはこうやって持つ。力が入らないんじゃないかと思うだろうが、疲れないで最大の力を刃先にかける事が出来る優れものだ。刃はカミソリの様に鋭く研ぎ上げているので、犬には舐めさせない方が良い。

まずはスクレイパーを使って少しづつ、毛穴を切らない様に慎重にメンブレインを削いでいく。危なそうなところや、スクレイパーの刃が立たない場所は軽石を使う。軽石は体重を載せてごりごりと削っていく。また、軽石が滑ってしまう場所はスクレイパーで毛羽立たせる。



結構重労働だ。でもどんどん削れていくので、やっていて楽しい作業だ。これはスクレイパーで削っているところ。



これは軽石か。体重を手首に載せてこするので、すぐに手首が痛くなる。両手でしっかりと体重を軽石に載せてこすっていった。右上側ツルツルした黄色っぽいところが手を着けていないメンブレン。一気にスクレイプしたいのだが、これでもう毛穴が出る寸前だ。

3時までやって、大体出来たので本日はここまで。明日もう一度残存しているメンブレンを砕いて、次ぎの柔らかくするステージをやりやすいようにしようと思う。




18:14:22 | hilo | No comments |

23 December

毛根



毛皮面は完全に乾いた。乾いた所を軽く引っ張ってみたが、脱毛は無かった。裏返して肉面を見ると、まだ40%湿っている程度の状態。だが、本日の天気が快晴で日当りも良く、気温も12度と高かったので、端の方は多分夕方には90%乾燥状態に入ると見て、フレームに張った。張ってすぐから皮が伸びて来出したので、80%ぐらいの力で締め込み直した。通常のくくり方では無く、一本一本むすんでいるので大変だ。
ところで見て頂ける通り、全体に白くなって、革質になった。鞣し液の浸透に成功した様だ。一応、「皮」は鞣し前のカワを指すので、今後は「革」という表記にさせて頂く。




ところで、僕の師匠達、実を言うと誰一人として熊の鞣しに成功した人が居ない。そしてその理由を何故か言いたがらない人達が多い。それがすごく疑問だったのだけど、ここに来てその理由が分かった気がする。それは熊独特のメンブレンの付き方と、毛穴の関係だろう。以前にも書いたが、夏熊の皮は、「皮」自体が非常に薄く、毛根が皮に収まらず、メンブレンの中程、ひどいものはメンブレンを突き抜けて脂肪層にまで食い込んでいるのだ。そのため、メンブレンを落とそうとむきになると、毛根を切ってしまう。



ご覧頂いて分かる通り。毛根を切っている。この上がメンブレン。右側に沢山ある、皮の上の膜の様なものだ。
つまり、どこまで FLESHING をしていいのかわからないのだ。この革もだいぶまだメンブレンが残っているが、余程厚い部分を取り除くのと、目の粗い部分を削っていく程度しか手を加えない方が良さそうだ。
このメンブレンだが、今回の様なケミカルを使った鞣しの際には存在をそう気にする必要はないと師匠が言っていたが、その通りだった。メンブレンがこれだけ残存していても、充分鞣し液は行き渡っている様だ。
しかしこれが脳漿鞣しをするとなると話は違う。メンブレンがこれだけ貼り付いて残存していると、おそらく脳漿は浸透しないとのことだ。特に HAIR ON (毛皮)で、ドライ技法で仕上げる場合は、毛面から脳漿を浸透させる事が出来ないので、恐らく失敗に終わるであろう事は容易に想像出来る。
僕の師匠達はほぼドライスクレイパーだ。僕もウェットは性格的に合わなさそうな事が今回でよく分かったので、ドライスクレイパーを目指しているのだが、HAIR ON の夏熊をやる場合は、脳漿鞣しは諦めた方が無難だ。師匠達も恐らく全員、基本とも言える FLESHING で失敗しているので、恥ずかしくて言えなかったのだろう。

関係あるのかどうか分からないが、平原族のいくつかの部族は熊を鞣す事はタブー扱いされている。実際あまり熊の毛皮を見る事が無い。歴史的には沢山の写真にあるのだが、実際に見る事はあまり無い。ある学芸員の方も示唆されていたのだが、やはりこれはその鞣しの難しさが関係しているのでは無いだろうか。そういえば、平原族の鞣し方にも、ウェットとドライの2種類がある。ドライ部族はもしや熊がタブーとか・・・かなり飛躍した考えで、学者さんには怒られるかもしれないし、ラコタ(ドライ技法)の過去の儀式写真で熊の毛皮を見た事があるので、多分間違っていると思うが。
熊を巡るタブーに関しては、件の学芸員の方から分厚い資料が届いているので、また手があいたらじっくり読もうと考えている。

何にしても、フレームに張ってじっくり観察したら、僕も相当毛穴を切ってしまっている。メンブレンが取り去られている所(写真で黒っぽく見える所ー全体の約50%)のうち、4割は切ってしまっていると思う。熊の毛は多分ダブルコートの様に思うので、ボコっとはげて見える事は無いだろうが、今後これがどう影響してくるのか、怖い所だ。
ともかく敷物にするのはやめようかと思う。実際コロが大張り切りで、今日も毛やら下あごやら何やら、必死にムシャムシャやっていたので、躾けても工房に敷くのは無理かな(笑)




20:12:46 | hilo | No comments |