12 January

問題児な脳漿鞣し革



現在、姉妹ポーチを製作中です。同じデザインなんですが、各々違う人の手元に行きます。そしてこれらを持つ人同士、何の縁もゆかりもありません。
一つは群馬のタツさんの手元へ。
もう一つはアイオア州のディキシーさんの手元へ。
この二人が居なかったら、今回の熊鞣しはなかったです。
お二人に共通していた事は、自分ですべてを引き受ける覚悟のあるところ。つまり、人のせいにしないところ。言い換えれば、見返りを求めないところ(笑)。
ということでそれぞれお礼の意味を込めて作りました。
これはOGLALAではなく、初の岡居宏顕ブランドになりそうです。商品では無く、作品。

タツさん、ディキシーさん、僕。この三人が居て、熊の鞣しが出来ました。もちろん、他にも沢山の人の助力等あったわけですが、中心はこの三人。
ということで、使用した革はディキシーさんの鞣したドライ・スクレイプド・ディアー。デザインはタツさんから頂いた熊から得たビジョン。製作は僕。デルタの一辺は繋がっていないけど、同じデザインのポーチを持つ人間どうし。

ちょっと良い話でしょう?


脳漿鞣しの革は繊維がスポンジの様になります。なので慣れるまでは大変。ビーズしにくい革です。自分の力の無さがモロに出て来ます。
昔、経済的に材料が買えなかった頃、ティッシュペーパーにビーズをして練習していた頃があります。まさにその感覚。上手く繊維の絡まりを掴まないと、繊維がほどけて破れます。
ビーズがしやすい革かどうかは、針が刺さりやすいかどうかだけでは無いと思います。他の要素も沢山あります。それで考えると脳漿鞣しは必ずしもビーズがやりやすい革ではないと思います。
ある理由から、矢鱈滅多らと指に針を刺してしまうんですよ。脳漿鞣しのを使っていると。

でも好きなんですよ。特に理由無し。好きなんだから仕方ないよ、って感じですね。




12:31:15 | hilo | 1 comment |

11 January

鹿革のスモークの真の威力



「資格」四面の世の中・・・そのうちインディアン・ビーズ検定なんてものが出来やしないかと、自己流の僕は戦々恐々としております。
そういう資格嫌いの僕ですが、ウンテンメンキョとエイケンとキュウキュウインの資格は持っております。ウンテンメンキョは別にしても、他は資格があったからって、それでどうなったって事はありません。要は出来てナンボっていう次元でしか生きた事がありません。


それはともかく。宮内庁の正倉院紀要閲覧第28号に、鹿革のスモーク(燻し処理)に関する非常に興味深い記述を見つけました。鞣しにまでは興味無くとも、スモークした鹿は色々なところで使われていますので、興味ある方も多いかと思います。抜粋を紹介致します(以下、正倉院紀要閲覧第28号「正倉院宝物に見る皮革の利用と技術」出口公長氏著より一部を要約)。


正倉院の宝物は千数百年の歳月を経ているが、そのうち、鹿革で作られた物は今日でもその柔軟性が損なわれていないばかりか、保管の良い物に関しては色彩までもが失われてはいない。宝物の鹿革はほとんどがバックスキンであり、今日に置いても柔軟性が失われていない理由の一つに燻し(スモーク)が考えられる。
これらの鹿革は脳漿による鞣しがされたようであるが、脳漿も化学的には皮蛋白と反応するとは考えがたく、単なる潤滑作用を持つに過ぎないが、真の鞣し効果を持つのは草木を燃やした時の煙の成分である。この処理を受けると、比較の保存性・耐久性が高まる。



他にも保存性等に関しては色々な要因があるそうなのですが、ちょっとすごいですね。燻しは僕も最近特に力を入れて勉強しています。ちなみに、燻しだけで鞣す方法もあるんですよ。

革は濡らすと硬くなってしまう事は良く知られていますが、スモークした革だと、揉んであげるだけで柔軟性が復活します。細菌等の繁殖を防ぎ腐りにくいという売り口上をよく聞きますが、僕はそれはどうかと思います。

あと、OGLALAへオーダーしてくださるお客様から「一生ものが欲しい」というご要望をよく伺いますが、それはちょっと違うと思います。修理等に関しては経年変化と乱暴な扱いによる破損以外は無償修理しておりますが、結局革である限り要は保管方法によることであり、一生モノになるかどうかはお客様次第ということでしょう。僕に出来るのは、最大限勉強して努力して、「そう成りうる商品を提供する」ことだけです。
でも、その「保管」によっては千数百年もそのまま残るんですね。これにはちょっと驚きました。正倉院の校倉造りの保存の質って結構怪しいと言う話ですし。細菌が繁殖しない説もあながち嘘では無いかもしれません。

一生ものどころではないですね。亀でも一生では足りません。屋久島の千年杉用に良いかもしれませんね。


上記資料にご興味のある方はグーグル検索してみて下さい。一発で出て来ます。勝手にリンクを貼ると怒られそうなので。




14:33:34 | hilo | 2 comments |

09 January

今度の鹿です。



今度来る鹿です。



写真提供:阿部達也

タツさんの先輩が仕留めた鹿。
雪が無いのによく仕留めれたなあと。
ものすごい距離あったんじゃないのかなあ。
ごっつい腕ですね。

でも、尻に当たって弾が出たせいでモモの皮に損傷があるって聞いていましたが、ははあ、これですね。
確かに結構大きな裂け目になっているので、もしかしたらフレームに張るのが難しいかもしれません。
ただ昨日読んだ本に、そういう場合の対処がいくつか載っていたので、状況次第で色々と考えられそうです。
長い間、色々とあったので、結果的にトラブルを楽しめる性格なんです(笑)

かなり小さな鹿の様なので、脳漿鞣しのチャレンジにはもってこいかもしれません。
タツさんにも友人達にも「最初熊やったあとの小鹿だから余裕だね!」と言ってもらったのですが、ニホンジカは脳漿鞣しには向いていない(皮が薄い)と言う話をアチレアさんのウェブサイト(リニューアルされました!)で読んでいるので、ドキドキです。
折角頂いた皮、頂いた命を無駄にしない様に、全力でとりかかります。

なんにしても、こうして誰がどうやって穫った物か。それが分かるのって本当に有難いです。それをここでこうして皆さんに紹介出来て、そしてそれが商品になっていきます(成功したらの話ですが)。
自分で言うのは何なのですが、本当、素晴らしい事なんじゃないのかな、って思います。野菜で言うと、作っている過程を逐一紹介しているようなものですよね。
これを可能にしてくれたすべての人、命、そしてモノに、感謝しています。
もちろん、買って下さる方があっての話ですから、お客様は当然含まれてますよ。


なお、今回も公開にして見学自由にしようと考えていたのですが、初めてのニホンジカ、初めての脳漿鞣し、ということもあって、残念ながら今回は自分の事で必死だろうと思われますので、非公開にさせて頂きます。直接見学を希望してらっしゃった方、申し訳ありません。次回にご期待下さい。もちろんブログでは逐一作業過程を報告致しますので、今回はそちらでお楽しみ下さい。

今年は雪が少ないので、タツさんも獲物が少ないかもしれませんが、どど〜んと来たら大変なので、頑張って冷凍庫を買わないといけないかもしれません。
今回はタツさんところの大型冷凍庫で凍らせて、こちらの熊が終わって落ち着いたタイミングに送って下さるとのことです。

ううう。。。タツさん、恩に着ます。。。

僕は本当、人に恵まれているだけなんですよね。
みなさん、本当に有難うございます。




22:28:26 | hilo | 17 comments |

03 November

革講座 第二回



間が開きましたが、10月26日の革講座第一回から引き続いて、第二回。



「脳漿鞣しのウェット・スクレイプ技法とドライ・スクレイプ技法」

結論から言うと、ビーズにはドライスクレイパーで作られた脳漿鞣しの方が良い様だ。
しかも、出来れば最高に上手い人の物より、ちょっと下手な人の物の方が扱いやすい。

これはどういうことかというと、まずはドライとウェットの技法の説明になるのだが、ウェット技法は灰汁等に生皮を漬け込んで、ふやけたことで分離しかかっているFIBER NETWORK層とEPIDRMISとGRAIN層とを、一気に削ぎ落としてしまう方法である。そういった技法故に、FIBER NETWORK層とGRAIN層とのちょうど境界近く、どちらかというとGRAIN層を少し残した辺りで剥がれる。対するドライ技法は、乾いた(とはいっても最初に洗ってから削ぎ始めるので、半乾き)状態で、チリチリとGRAIN層を削って行くので、自然と境界のFIBER NETWORK層寄りを剥ぐ事が多くなる。
ビーズに向いている理由の一つは、まず、このGRAIN層が残っていない事が重要で、これが残っていると、針先は入りやすくても、針尻が抜きにくいということになる。

次に、ウェット技法は脳漿液に漬け込むので、脳漿の溶液が浸透しやすく、非常に柔らかく柔軟な革に仕上がるのだが、ドライ技法は脳漿のペーストを塗り込むので、特に下手な人の物だと、完全には脳漿が浸透せず、一部に硬い層が出来る事が多い。この硬い層は、掬い縫いで入って来た針を上手く裏面まで貫通させずに跳ね返らせ、表皮に浮上するのを助けてくれる。
また、硬い部分があることで、糸のテンションで革自体が変形するというトラブルも防げる。

ウェット技法の柔らか過ぎる革は、細工をしないでドレス等に用いるのには最高だ。その無比の柔らかさは、僕はこれで服を作った事は無いが、着心地の良さを想像するに難く無い。
が、一方では、ビーズ細工にとっては、掬い縫いが難しく、裏までどうしても貫通してしまい、しかも残存Grainで糸尻に引っかかりがあるので、抜く際に革を強く引っ張る事となり、革の変形を招く。クイル細工にとってもやはり扱いにくい革の様で、僕の友人のインディアン達もウェットの脳漿を使うなら、工業鞣しの革の方が良いと言っている。


そこで一つ解けた謎がある。
平原族でドライを使っているのは、ラコタ族等、ごく一部の部族のみである。大多数の平原族はウェット技法だ(ただし、バッファローの毛皮は、ドライ技法)。ラコタの細工を見ていると、裏地を使いたがっていないものが多い。もちろん例外もあり、裏地付けがブームになった時期もあるのだが、一方では、ウェット技法が多く用いられた部族の細工品には、早い時期から裏地を取り付けている物が目立つ。

何故互いに影響を多く与え合った平原族において、ウェット技法とドライ技法とハッキリ分かれているのは、こういうバックがあるからなのか、技法の違いから細工の違いが生まれるのか。
これは僕の憶測だが、後者の場合、ウェット技法とドライ技法とに分かれている理由は、「鹿の違い」が大きく起因しているように思う。
ラコタの居留地で見る鹿は、エルク(アカジカの種類ーCervus系)が多い様に思う。対してウェット技法が多く用いられた、若干山寄りの部族が住んでいた場所では、オジロジカやミュールディア、ブラックテイル等のOdocoileusの系統をよく見る。
アチレアの斉藤さんによると、ニホンジカ(亜種エゾジカ等も含む)は鞣しが非常に難しいとの事。そして、そのニホンジカはエルクに近いCervus系である。
エルクは革が厚いという異論も聞こえてきそうだが、本当に厚いのはFIBER NETWORK層以外の場所ではなかろうか。

以上は机上の空論なのだが、どうもニホンジカはドライ技法なら鞣しやすいのではないだろうか。僕はラコタ文化の継承を心がけているので、ドライ技法で行くつもりなので、実際にニホンジカ(Cervus Nippon)を手がけるのが楽しみである。


尚、脳漿鞣し自体は、古くから日本でも行われていた。以下、既出だが、もう一度参考文献として以下を転載させて頂く。

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「大阪の部落史通信・38号(2006.03)」より転載

「・・・・考古学的な調査成果から平城京や平安京では、生活排水による汚濁が著しい京域南辺に斃牛馬処理工房が存在していたが、一〇世紀になると埋め立てられて宅地化し、そうした工人たちが鴨川のほとりに移住し、河原者と呼ばれるようになったことを指摘した。また、脳漿鞣しのための脳髄を取り出した馬の頭蓋が、五世紀の新羅の首都・慶州、七世紀の森の宮遺跡、八世紀の城山遺跡に出土例があり、これまで『日本書紀』仁賢紀にみえる、高句麗から新しい皮鞣しの技法を伝えた工人が、脳漿鞣しを伝え、その子孫らが奈良時代に「額田邑熟皮高麗(かわおしのこま)」として皮鞣しを行なっていたとされるが、新羅からも脳漿鞣しが伝播した可能性を示唆した。一方、斃牛馬処理や皮鞣しは必然的に水や空気の汚染を引き起こすことから、このような場所やそこで働く人びとがケガレと結びつけられるようになり、やがて差別が増長し、身分制の中で支配機構に組み込まれたと主張した。・・・・・」

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また、印伝もホルマリンに代わるまでは脳漿を使用していたということなので、やってやれない事は無いのだろう。ちなみに、印伝はウェットスクレイプ技法だったと聞いているが確かでは無い。




22:11:18 | hilo | No comments |

02 October

秋雫譜



前と違う方法で革を染めてみた。
ちょっと白すぎる革で、通常ならスモークをかけてやれば良いのだけど、オイル鞣しなので、熱で硬化しそうなので染色にした。



前回は、そのあたりにあったもので染めたが、今回は真面目に(?)クヌギを使ってみた。それに日光堅牢度の高いエンジュを混ぜて、深みを出す為に阿仙薬を入れてみた。
今回は上にビーズが乗ったとき、土台が光って目立たない様にするためだったので、自然に色が着いた感じにしたかった。
ナカナカ良い。
革自体が目立つ様にするなら、錆釘なんかを混ぜると阿仙薬が化学変化をおこして面白いのではなかろうか。ただ、それだと、絵の具にした状態で混ぜていって塗る必要がある。


雨上がり、庭に出ると雫が音を奏でている様だった。









21:34:59 | hilo | No comments |